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Interview

シフトする人 #1 株式会社ADLIVE代表 松木順水さん

人生を添加して変化を楽しむ

このコロナ禍に福岡から東京へ打ってでた頼もしい女性がいる。しかも、広告関連からレストラン経営という一見畑違いのようにもみえる業種で、だ。

人生を添加して変化を楽しみ、彩りある生き方をしている人を紹介する本インタビュー記事。その初回にふさわしい主人公は、株式会社ADLIVE代表・松木順水(まつき なおみ)さんだ。ADLIVEは、ブライダル業界をメインに、広告や出版物、WEBなどの撮影業からスタートした会社である。もともと株式会社リクルートが発行するブライダル情報誌『ゼクシィ』で制作を担当していた松木さん。経験に基づいた企画提案が評判を呼び、2年目にして年間40件もの撮影受注があったという。現在は、撮影のみならず、エディトリアルやコンサルティングまで事業内容は幅広い。台湾でもブライダル事業を展開するなど、活躍の場も福岡にとどまらない。

まずは30歳で社長になる夢を実現

そもそも気になるのは、なぜ大手企業を辞めて、起業したのか?松木さんに尋ねてみると、なんとも可愛らしい答えが返ってきた。

「昔から30歳になったら社長になろうと心に決めていたんです(笑)。業界にこだわりはなく、どんな仕事でもいいのでとにかく社長になろうと。とはいっても、最初から法人化したわけではなく、まずはフリーランスから。その当時自分にできること、『ゼクシィ』の制作ディレクターをはじめました。法人化したのは、独立から7年後の2017年ですね」

コロナ禍で打撃を受けたブライダル業界

松木さんが独立してちょうど10年目の2020年、誰も想像だにしない出来事が起こる。そう、新型コロナウイルスのパンデミックだ。ブライダル業界はとりわけ大きな影響を受けた。日本ブライダル文化振興協会によると、20年度は全国で約27万組のカップルが結婚式を延期。この1年の結婚式場の損失は兆円に上るという。式場をメインクライアントとする松木さんの会社も無論、大打撃である。

「仕事はほぼゼロになりました。とはいえ、嘆いていても仕方ない。今できることを考え、とりあえず片っ端からやってみました。WEBマガジンをはじめてみたり、非接触型の体温アラームの販売代理店になったり。生きていくためですから、本当になんでもアリです。でも、何ひとつ実を結びませんでしたね」

自分たちが本当にやりたいことは——

トライ&エラーを繰り返すこと約1年、スタッフ全員でプレゼン大会を行うことにした。自分たちが本当にしたいことは何なのか——。そこで多く聞かれたのが、今までやってきたブライダルの仕事でもある、人の幸せの時間に携わりたい、応援したいということ。しかし世の中はいまだ結婚式などできない状況。元通りになることはきっとない。これからの時代の結婚式の方向性を探るうえで、従来の結婚式というものを改めて見直してみた。1パーティ2時間程度、かかる費用は3~500万円。キャンドルサービスだの、カップルとは無縁の司会者だの、必要ではないものが多すぎる。

「ふたりをお祝いした人たちがふたりを想ってお祝いする、これが結婚式の本質だと思うんです。そんな場所を提供したい、それがスタッフ全員で導き出した答えでした」

時を同じくしてもうひとつ、転機が訪れる。それは、松木さんがプライベートでファスティングを体験したことだ。その流れで始めたグルテンフリー生活。以来、体の調子は目に見えて良くなり、体重は自然と落ちていった。生まれて初めて健康というものを体感したという。

「まぁそれまでが1日にタバコ4050本、ワイン2~3本を開ける、不健康を地でいく生活だったんですけどね(笑)」

点と点が線になりレストラン経営へ

結婚式の本質を提供する場所をつくる、ご自身でその魅力を実感したグルテンフリー。点と点が繋がり、一本の線になった。

「パーティもできるグルテンフリーのレストランをつくろう!どうせなら東京で!」

そうと決まれば行動あるのみ。東京で店舗探しをはじめると、知り合いから田町の物件を紹介される。思っていたより大きな店舗だったが、場所や開放感がとても気に入り、即決。そんな折、別の知り合いからも「いい物件がある」と声がかかる。そこは中目黒。隠れ家的な雰囲気を放ち、10席ちょっとというこぢんまり感がいい。田町の方をすでに契約済みだったものの、こちらも捨てがたい。そこで松木さん、

「これも何かの縁。コンセプトを変えて2店舗、やっちゃおう!」と、大胆な決断をする。

2021年6月、グルテンフリーやヴィーガンメニューを提供する『biotable.』を田町に、会員制の懐石料理店『束ね重ね』を中目黒にオープンさせる。構想からわずか4カ月である。きっと誰もが思ったであろう「思い立ったら真っしぐらな性格ですか?」との問いに、「信じてもらえないことが多いんですけど、実は石橋を叩きまくる慎重派。今回の件で初めて借り入れをしましたけど、それまで無借金無担保経営を貫いていたくらいですから」と笑う。

「物件を紹介してくれた方々もそうですけど、すべては周りが助けてくれたからできたこと。うちのスタッフの存在も大きくて、そもそも私ひとりだったら店をもつなんて考えもしなかったでしょうね」。

新しいことをはじめる際には必ず人との出会いがあり、いろんな人に支えられてきたと、松木さんは振り返る。

心遣いが光る日本の祝い文化を世界へ

お店がオープンして2カ月、今の状況を尋ねてみた。

「コロナで営業もままならい日々ですが、スタッフ全員、やっと仕事ができる喜びを噛みしめています(笑)。レストランはお客様の反応がダイレクトに、デイリーに感じられるのもいいですね。これまでのブライダル業では答えがでるのは半年から1年後でしたから。厳しいご意見でさえ、ありがたく感じます。改善できるチャンスですから。課題を与えられたと思ってワクワクするんです」どこまでも前向きである。

レストランを軌道に乗せることが松木さんのゴールではない。ご自身の原点でもあるブライダルは大事にしていきたいと語る。

「台湾でのブライダル事業を通して感じたことですが、やはり日本の結婚式は素晴らしいんです。細部までこだわった装飾はもちろん、食事の提供のタイミングひとつとってもおもてなしが息づいています。そんなきめ細やかな接遇を日本ブランドとして世界に広めていくことが目標です。これが、メイドインジャパンのパーティ文化だ!どう?みんながハッピーになれるでしょ?ってね」

本文中のブライダル業界損失等は以下記事より引用

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001124.000011414.html

店名:biotable.(ビオターブル.)
住所:東京都港区芝浦3-19-17 2F
営業時間:ランチ/11:00~15:00(ラストオーダー 14:00) ディナー/17:00~22:00(ラストオーダー 21:00)
定休日:日曜(祝日除く)
※営業時間・定休日は変更の場合あり
問い合わせ:03-6809-5499 

http://biotable.jp

店名:束ね重ね
住所:東京都目黒区
(詳細は非公開 会員様のみにお伝え)
営業時間:16:00~23:00※要予約
定休日:日曜日
問い合わせ:03-6809-0740

https://www.tabanekasane.jp/

シフトする人#2 株式会社ピッカンテ 取締役 永石守利武さんの記事へ